国際連合憲章

(抜粋)[1956年12月19日条約第26号]

 われら連合国の人民はわれら一生のうちに二度まで言語に絶する悲哀を人類に与えた戦争の惨害から将来の世代を救い、基本的人権と人間の尊厳及び価値と
男女及び大小各国の同権とに関する信念をあらためて確認し、正義と条約その他の国際法の源泉から生じる義務の尊重とを維持することができる条件を確立し、
いっそう大きな自由の中で社会進歩と生活水準の向上とを促進すること、並びにこのために寛容を実行しかつ善良な隣人として互いに平和に生活し、
国際の平和及び安全を維持するためにわれらの力をあわせ、共同の利益の場合を除くほかは武力を用いないことを原則の受諾と方法の設定によって確保し
 すべての人民の経済および価値と経済および社会的発展を促進するために国際機構を用いることを決意して、これらの目的を達成するために、
われらの努力を結集することに決定した。
 よって、われらの各自の政府は、サン・フランシスコ市に会合し、全権委任状を示してそれが良好妥当であると認められた代表者を通じて、
この国際連合憲章に同意したので、ここに国際連合という国際機構を設ける。

第一章 目的および原則



第1条


国際連合の目的は、次のとおりである。

  1. 国 際の平和及び安全を維持すること。そのために、平和に対する脅威の防止及び除去と侵略行為その他の平和の破壊の鎮圧とのため有効な集団的措 置をとること並びに平和を破壊するに至る虞のある国際的紛争または自体の調整または解決を平和的手段によってかつ正義及び国際法の原則に従って実現するこ と。
  2. 人民の同権及び自決の原則の尊重に基礎をおく諸国間の友好関係を発展させること並びに世界平和を強化するために他の適当な措置をとること。
  3. 経済的、社会的、文化的または人道的性質を有する国際問題を解決することについて、並びに人種、性、言語または宗教による差別なくすべてのもののために人権及び基本的自由を尊重するように助長奨励することについて、国際協力を達成すること。
  4. これらの共通の目的の達成にあたって諸国の行動を調和するための中心となること。

 

第2条


この機構及びその加盟国は、第1条に掲げる目的を達成するにあたっては、次の原則に従って行動しなければならない。

  1. この機構は、そのすべての加盟国の主権平等の原則に基礎をおいている。
  2. すべての加盟国は、加盟国の地位から生ずる権利及び利益を加盟国のすべてに保証するために、この憲章に従って負っている義務を誠実に履行しなければならない。
  3. すべての加盟国は、その国際紛争を平和的手段によって国際の平和及び安全並びに正義を危うくしないように解決しなければならない。
  4. すべての加盟国は、その国際関係において、武力による威嚇または武力の行使を、いかなる国の領土保全または政治的独立に対するものも、また、国際連合法の目的と両立しない他のいかなる方法によるものも慎まなければならない。
  5. すべての加盟国は国際連合がこの憲章に従ってとるいかなる行動についても国際連合にあらゆる援助を与え、かつ、国際連合の防止的行動または強制行動の対象となっているいかなる国に対しても援助の供与を慎まなければならない。
  6. この機構は、国際連合加盟国でない国が、国際の平和及び安全の維持に必要な限り、これらの原則に従って行動することを確保しなければならない。
  7. こ の憲章のいかなる規定も、本質上いずれかの国の国内管轄権内にあることに干渉する権利を国際連合に与えるものではなく、また、そ の事項をこの憲章に基づく解決に付託することを加盟国に要求するものでもない。ただし、この原則は、第7章に基づく強制措置の適用を妨げるものではない。 (略)

第6章 紛争の平和的解決



第33条


  1. い かなる紛争でもその継続が国際の平和及び安全の維持を危うくする虞のあるものについては、その当事者は、まず第1に交渉、審査、仲介、調 停、仲裁裁判、司法的解決、地域的機関または、地域的取り決めの利用、その他当事者が選ぶ平和的手段による解決を求めなければならない。
  2. 安全保障理事会は、必要と認めるときは、当事者に対して、その紛争を前記の手段によって解決するように要請する。

第34条



安全保障理事会は、いかなる紛争についても、国際的摩擦に導きまたは紛争を発生させる虞のあるいかなる事態についても、その紛争または事態の継続が国際の平和及び安全の維持を危くする虞があるかどうかを決定するために調査することができる。することができる。
 

第35条


  1. 国際連合意加盟国は、いかなる紛争についても、第34条に掲げる性質のいかなる事態についても、安全保障理事会または総会の注意を促すことができる。
  2. 国際連合加盟国でない国は、自国が当事者であるいかなる紛争についても、この憲章に定める平和的解決の義務をこの紛争についてあらかじめ受諾すれば、安全保障理事会または総会の注意を促すことができる。
  3. 本条に基づいて注意を促された事項に関する総会の手続きは、第11条の規定に従うものとする。

第36条


  1. 安全保障理事会は、第33条に掲げる性質の紛争または同様の性質の事態のいかなる段階においても、適当な調整の手続きまたは方法を勧告することができる。
  2. 安全保障理事会は、当事者がすでに採用した紛争解決の手続きを考慮にいれなければならない。
  3. 本条に基づいて勧告をするにあたっては、安全保障理事会は、法律的紛争が国際司法裁判所規定の規定に従い当事者によって原則として同裁判所に付託されなければならないことも考慮に入れなければならない。

第37条


  1. 第33条に掲げる性質の紛争の当事者は、同条に示す手段によってこの紛争を解決することができなかったときは、これを安全保障理事会に付託しなければならない。
  2. 安全保障理事会は、紛争の継続が国際の平和及び安全の維持を危うくする虞が実際にあると認めるときは、第36条に基づく行動をとるか、適当と認める解決条件を勧告するかのいずれかを決定しなければならない。

第38条



第33条から第37条までの規定に関わらず、安全保障理事会は、いかなる紛争についても、すべての紛争当事者が要請すれば、その平和的解決のためにこの当事者に対して勧告jをすることができる。
 

第7章


平和に対する脅威、平和の破壊及び侵略行為に関する行動
 

第39条



安全保障理事会は、平和に対する脅威、平和の破壊または侵略行為の存在を決定し、並びに、国際の平和及び安全を維持しまたは回復するために、勧告をし、または、 第41条及び第42条に従っていかなる措置をとるかを決定する。

第40条



事 態の悪化を防ぐため、第39条の規定により勧告をし、または措置を決定する前に、安全保障理事会は、必要または望ましいと認める暫定措置に従うよ うに関係当事者に要請することができる。この暫定措置は、関係当事者の権利、請求権または地位を害するものではない。安全保障理事会は、関係当事者がこの 暫定措置に従わなかったときは、そのことに妥当な考慮を払わなければならない。

第41条



安全保障理事 会は、その決定を実施するために、兵力を伴わないいかなる措置を使用すべきかを決定することができ、かつ、この措置を適用するように国 際連合加盟国に要請することができる。この措置は、経済関係及び鉄道、航空、郵便、電信、無線通信その他の運輸通信の手段の全部または一部の中断並びに外 交関係の断絶を含むことができる。

第42条



安全保障理事会は、第41条に定める措置では不十分であろ うと認め、または不十分なことが判明したと認めるときは、国際の平和及び安全の維持または 回復に必要な空軍、海軍、または陸軍の行動をとることができる。この行動は、国際連合加盟国の空軍、海軍または陸軍による示威、封鎖その他の行動を含むこ とができる。

第43条


  1. 国際の平和及び安全の維持に貢献するため、すべての国際連合加盟国は、安全保 障理事会の要請に基き、かつ、1または2以上の特別協定に従っ て、国際の平和及び安全の維持に必要な兵力、援助及び便益を安全保障理事会に利用させることを約束する。この便益には通過の権利が含まれる。
  2. 前記の協定は、兵力の数及び種類、その出動準備程度及び一般的配置並びに提供されるべき便益及び援助の性質を規定する。
  3. 前記の協定は、安全保障理事会の発議によって、なるべく速やかに交渉する。この協定は、安全保障理事会と加盟国との間または安全保障理事会と加盟国群との間に締結され、かつ、署名国によって各自の憲法上の手続きに従って批准されなければならない。

第44条



安 全保障理事会は、兵力を用いることに決定したときは、理事会に代表されていない加盟国に対して第43条に基いて負った義務の履行として兵力を提供 するように要請する前に、その加盟国が希望すれば、その加盟国の兵力中の割り当て部隊の使用に関する安全保障理事会の決定に参加するようにその加盟国を勧 誘しなければならない。

第45条



国際連合が緊急の軍事措置をとることができるようにうするために、加 盟国は、合同の国際的強制行動のため国内空軍割り当て部隊を直ちに利用に供する ことができるように保持しなければならない。これらの割り当て部隊の数量及び出動準備程度並びにその合同行動の計画は、第43条に掲げる1または2以上の 特別協定の定める範囲内で、軍事参謀委員会の援助を得て安全保障理事会が決定する。
 

第46条



兵力使用の計画は、軍事参謀委員会の援助を得て安全保障理事会が作成する。

第47条


  1. 国際の平和及び安全の維持のための安全保障理事会の軍事的要求、理事会の自由に任された兵力の使用及び指揮、軍備規制並びに可能な軍備縮小に関するすべての問題について理事会に助言及び援助を与えるために、軍事参謀委員会を設ける。
  2. 軍 事参謀委員会は、安全保障理事会の常任理事国の参謀総長またはその代表者で構成する。この委員会に常任委員として代表されていな い国際連合加盟国は、委員会の責任の有効な遂行のため委員会の事業へのその国の参加が必要であるときは、委員会によってこれと提携するように勧誘されなけ ればならない。
  3. 軍事参謀委員会は、安全保障理事会の下で、理事会の自由に任された兵力の戦略的指導について責任を負う。この兵力の指揮に関する問題は、後に解決する。
  4. 軍事参謀委員会は、安全保障理事会の許可を得て、かつ、適当な地域的機関と協議した後に、地域的小委員会を設けることができる。

第48条


  1. 国際の平和及び安全の維持のための安全保障理事会の決定を履行するのに必要な行動は、安全保障理事会が定めるところに従って国際連合加盟国の全部jまたは一部によってとられる。
  2. 前記の決定は、国際連合加盟国によって直接に、また、国際連合加盟国が参加している適当な国際機関におけるこの加盟国の行動によって履行される。

第49条



国際連合加盟国は、安全保障理事会が決定した措置を履行するにあたって、共同して相互援助を与えなければならない。

第50条



安全保障理事会が、ある国に対して防止措置または強制措置をとったときは、他の国でこの措置の履行から生ずる特別の経済問題に自国が当面したと認めるものは、国際連合加盟国であるかどうかを問わず、この問題の解決について安全保障理事会と協議する権利を有する。

第51条



こ の憲章のいかなる規定も、国際連合加盟国に対して武力攻撃が発生した場合には、安全保障理事会が国際の平和及び安全の維持に必要な措置を取るまで の間、個別的または集団的自衛の固有の権利を害するものではない。この自衛権の行使にあたって加盟国がとった措置は、直ちに安全保障理事会に報告しなけれ ばならない。また、この措置は、安全保障理事会が国際の平和及び安全の維持または回復のために必要と認める行動をいつでもとるこの憲章に基く権能及び責任 に対しては、いかなる影響も及ぼすものではない。(略)